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一章 何かを守るために 2

 クレスは荒い息をして、巨木に身を任せていた。太ももの切り傷ーーー風の刃に貫かれてできた傷だーーーからの出血が酷く、めまいがする。足が震えるので走ることはできないし、そんな状態で動き回っても血痕を残して相手を追わせるだけだ。
 メギ、と、巨木がへし折れた。
 さすがのクレスでも反応できず、倒れてくる幹をまともに受けた。とっさにフィリックの火炎で受け止めなければ、間違いなく下敷きになって即死だっただろう。
 それでなくても、支えきれなかった木におしつぶされて死ぬはずだった。だが、それは真横から矢のように駆けてきた深紅の犬に突き飛ばされたことで回避された。
「ハァイ犯罪者のティルハング君!!」吹き飛んださきで待ち構えていたのは、一人の女だった。その女はぺろりと舌を出し、高速で飛んできたクレスに、鋭い膝蹴りを放った。
 その細いが硬い膝に思い切り頭をぶつけたクレスは、「ね・・・え・・・さ、ん・・・」
 
 一瞬で昏倒した。

 アルビス=ティルハングは倒れてしまったが、ジャンはなんとか耐えた。風の刃に打ちつけられた額から、血が流れた。
「・・・はっ、ガキでもこのくらいは堪えれるか・・・ビショップ候補はダテじゃぁねえってか?」
襲撃者はつまらなさそうにジャンを眺めた。ジャンは怯えとも敵意ともとれる眼で中腰のまま男を見上げている。その眼が、なにかを求めるようにすばやく動いた。
「そうそう、助けが来ると困るんだよなぁ!それまでにカタつけさせてもらうぜえ!!」
男が腕を振り上げた。その手には、ごく小さなふくろうがとまっていた。
「死ねええぇぇぇぇぇ!!」
男がその手を、振り下ろせなかった。
「あ・・・?」ぴきりと凍りついた腕をみて、男は硬直した。
「誰も、見ていないみたいですね。じゃあ、本気でやります。」
男の表情が嘲りから恐怖へと変わり、
そのままうごかなくなった。

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